新潟地方裁判所三条支部 平成6年(ワ)101号 判決 1997年3月21日
新潟県西蒲原郡吉田町大字西太田二〇八八番地六
原告
宇佐美工業株式会社
右代表者代表取締役
宇佐美貢二
右訴訟代理人弁護士
藤巻元雄
右輔佐人弁理士
牛木理一
新潟県三条市直江町四丁目一七番一九号
被告
株式会社斎藤製作所
右代表者代表取締役
斎藤信男
右訴訟代理人弁護士
高橋賢一
右輔佐人弁理士
吉井昭栄
主文
一 被告は、別紙イ号ないしチ号物件に係る商品形態の説明書及び図面記載のイ号ないしチ号物件の商品を製造し、譲渡し、引渡し、譲渡もしくは引渡しのために展示し、輸出し又は輸入してはならない。
二 被告は、別紙イ号ないしチ号物件に係る商品形態の説明書及び図面記載のイ号ないしチ号物件の商品、半製品(仕掛品)及び右各商品の製造用金型並びに右各商品の宣伝、広告、説明用パンフレツト類を廃棄せよ。
三 被告は、原告に対し、金一二九六万四四五五円及びこれに対する平成六年一〇月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告のその余の請求を棄却する。
五 訴訟費用はこれを一〇分して、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
六 この判決は、第三項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
一 被告は、別紙イ号ないしチ号物件に係る商品形態の説明書及び図面記載のイ号ないしチ号物件の商品を製造し、譲渡し、引渡し、譲渡もしくは引渡しのために展示し、輸出し又は輸入してはならない。
二 被告は、別紙イ号ないしチ号物件に係る商品形態の説明書及び図面記載のイ号ないしチ号物件の商品、半製品(仕掛品)及び右各商品の製造用金型並びに右各商品の宣伝、広告、説明用パンフレツト類を廃棄せよ。
三 被告は、原告に対し、金四〇〇〇万円及びこれに対する平成六年一〇月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 本件は、昭和六〇年六月ころから原告の商品表示としての機能を有する床下用換気口用器材(原告の商品名は「床下換気孔」という。)を製造、販売していたと主張する原告が、平成五年五月ころから床下用換気口器材の製造、販売を始めた被告に対し、被告が製造、販売する商品(以下「被告商品」という。)は原告の製造、販売する商品(以下「原告商品」という。)の商品表示と同一もしくはこれに類似するものであって、両者の製品の誤認混同が継続すれば原告の営業上の利益が著しく害されるとして、不正競争防止法第二条第一項第一号、第三条に基づき、その製造、販売等の差止め並びに被告商品・半製品及びその製造に供した金型等の廃棄を、同法四条に基づき損害の賠償をそれぞれ求めている事案である。
二 (前提事実)
1 原告は、昭和三一年一一月二日、建築金物の製造及び販売等を目的として当初有限会社として設立され、平成二年一月一七日に組織変更された株式会社である。(甲一の一)
2 被告は、主として建築金物の製造及び販売等を目的とする株式会社である。(争いのない事実)
3 原告は、昭和六〇年六月ころから別紙原告商品の説明書及び図面記載原告商品(1)ないし(8)を「床下換気孔」と命名した上、製造、販売している。(甲二の一ないし八、甲四の一ないし四、甲三六の一ないし七、原告代表者本人)
4 被告は、従前床下用換気口及びこれに類する製品は一切製造していなかったが、平成五年五月ころから別紙イ号ないしチ号物件にかかる商品形態の説明書及び図面記載のイ号ないしチ号物件の形態を有する被告商品の製造を開始し、「床下換気孔」と命名して販売している。(争いのない事実)
5 原告商品と被告商品の商品形態は、若干の点を除き全くといっていいほど同一である。(争いのない事実)
6 被告は、平成五年四月ころ、別紙ロ号物件、別紙ハ号物件及び建築換気製品ステン丸型フード付ガラリタイプほか四種類の写真を掲載したポスターを多数作成し、問屋などに配布し、「原告商品と同一商品を原告よりも安く売る」ということをキヤツチフレーズに販売活動を開始したが、右ポスターに被告商品として掲載していた前記製品の写真がいずれも原告商品を写真撮影したものであったことから原告の抗議を受け、同年五月下旬、被告代表者が原告方を訪れ謝罪し、前記ポスターと包装箱の廃棄を約束した。(争いのない事実)
7 被告は、東京商工リサーチ新潟支社発行の「TSR」(一九九三年夏季号-平成五年八月一六日、二三日合併号)及び同「TSR」(一九九四年新春号-平成六年一月三日、一〇日合併号)に別紙ロ号物件、別紙ハ号物件及び建築換気製品ステン丸型フード付ガラリタイプほか四種類の写真を掲載した広告をしたが、右広告に掲載された写真が、被告代表者が先に廃棄を約束した前記ポスター中の原告商品の写真そのものであつたことから、平成六年二月三日ころ原告から抗議を受け、同月九日、原告に対し、写真の無断使用を謝罪したものの、なお原告商品と同一商品の製造・販売を続ける旨明言していた。(争いのない事実)
その後被告は、原告から被告が原告と同一商品を販売するならば不正競争防止法に基づく差止手続をとる旨の通告を受けたことから、前記ステン丸型フード付ガラリタイプについては原告製品と同一の製品を製造販売しない旨言明するに至った。(争いのない事実)
三 争点
1 原告商品は、その形態が、原告の商品を表示するものとして需用者の間に広く認識されているか。また、被告商品は、原告商品と混同されて販売されているか。
2 原告の損害の有無と額
四 争点に関する当事者の主張
1 争点1について
(原告の主張)
(一) 床下換気口用器材は、建物の基礎部分にあけた換気口部分に嵌挿するものであるが、右換気口の形態は方形に限らず、円形のものも存するうえその大きさも一定ではない。また、換気口用器材に設ける通孔も、縦長通孔、横長通孔、変形八角形通孔、方形通孔、菱形通孔等様々であり、縦長通孔でも横さんを入れて二段に縦長通孔を形成するもの、四段に縦長通孔を形成するものがあるうえ通孔の数をいくつにするかという問題もある。さらにこの通孔を開閉できるスライドを設けるか否か、そのスライドの開閉の方法等についても差異があるほか、平板体の周囲に縁取りをするか否か、通孔の周辺部に縁取りをするか否か、裏側に網を張るか否か、いかなる材質を選ぶかという点についても様々な組み合わせが考えられるものであり、床下換気口用器材については多種多様の商品形態が考えられるものである。
(二) 原告商品は、建物の基礎部分にあけた床下換気口箇所に設置するものであるが、原告商品以前には背面部に金網板を張ったものはなかった。原告商品が、右金網板を張ることにより、床下の換気の目的を達すると共に、床下への小動物や異物の侵入を防ぐことができるようになった。
また、原告商品が出現する以前の床下換気口用器材は、コスト面を考慮してプラスチツクスや鐵鋳物を使用していたものばかりで、ステンレス鋼を使用したものはなかったが、原告は、原告商品の製造鋼材としてステンレス鋼(SUS三〇四)を初めて使用した。
(三) 原告商品の形態は、別紙原告商品の説明書及び図面記載原告商品(1)ないし(8)記載のとおりであるが、これは原告が開発・製造を開始したもので、前項記載の特徴と相俟って原告の商品表示としての機能を有するものである。そして、原告商品は、原告の営業活動や販売促進活動により、発売以来三年目ころから売り上げが伸び始め、その後は毎年売上が飛躍的に伸び、製造以来八年余で三二〇万個を越える販売数となったものである。
(四) 最近の原告商品の販売個数は、わが国の床下換気口用器材の需要の約一割に達するものであり、原告商品は、原告の宣伝とその販売個数により問屋、建築業者、基礎屋の間において販売個数が二〇〇万個に達した遅くとも平成四年一〇月ころまでには原告のステンレス製の金網張設の「床下換気孔」として周知となったものである。
(五) 原告商品と被告商品の商品形態は、若干の点を除き全くといつていいほど同一であり、その名称も原告商品と同じであることから、被告商品は原告商品と混同されて販売されている。
(被告の主張)
(一) 原告が不正競争防止法二条一項一号に言う商品表示として主張する原告商品の形態及び商品名は、川島銅工所作成の原告商品と極めて類似した商品が存在するなどすることから、自他識別機能または出所表示機能を欠くものであり、またその形態も床下換気口用器材が通常有する形態の商品であり特徴のあるものではないから、需用者の間に広く認識されている原告の商品表示とはいえず、被告がこれら原告商品と同じ商品形態の商品を製造販売することは自由競争のもとで当然に許されるものである。
(二) 原告商品は、原告の商品であることを特定する周知商品ではなく、出所の混同を生じるものではないが、さらに、被告は被告商品の名称を「床下換気口用高級ステン製窓枠」と改称し、その新しい名称を印刷した新しい包装段ボール箱を使用しているから、原告商品と誤認混同されることはない。
2 争点2について
(原告の主張)
(一) 原告は、被告商品の販売により原告商品の値下げを実施せざるを得なくなり、平成六年五月一日から全取引先に対して別紙「旧価格・新価格差」表の旧価格欄記載の価額から新価額欄記載の価格に値下げをした。その結果、平成五年五月一日から平成七年六月三〇日までの間の値下げによる原告の損害は四七〇〇万〇二九〇円となった。
(二) また、被告商品の販売により原告商品の販売数が減少したが、そのことによる損害額の算定は、被告が自らの不正競争行為であげた粗利益をその基礎とすべきであるところ、その額は一〇〇一万九四三九円となる。
仮に不正競争行為による損害を純利益を根拠として計算すべきであるとしても、被告は被告商品の販売による純利益を明らかにしていないことから原告商品の純利益額をもつて計算すべきであるところ、原告商品の純利益額は一個当たり一二一円であるから、これに被告が自認する販売数量一二万三四七一個を乗じた一四九三万九九九一円が販売減による原告の損害となる。
(三) さらに、原告は本訴の提起を原告代理人及び原告補佐人に依頼し、着手金として金二五〇万円を支払い、平成八年五月に中間金として金九〇万円を支払い、かつ第一審終了時に報酬として金三〇〇万円を支払う旨約しているもので、右金六四〇万円は被告の不正競争行為による原告の損害である。
(被告の主張)
(一) 原告の主張は否認する。
(二) 仮に原告の損害を考えるとしても、被告の純利益額を基礎とすべきであるところ、被告商品の総売上額は三二二六万六三六〇円であり、これに対する粗利益率はおよそ一五パーセントであつて、これから営業諸経費を引いた純利益率は約五パーセント程度であるから、被告の純利益の額は一六一万三三一八円である。さらに、被告は原告との争いを避けるために被告商品の全部につきデザインを変更したが、そのための金型改造費の合計は二六〇万円であるから、被告の利益はマイナスとなる。したがつて、利益の返還を求める損害賠償は認められない。
第三 当裁判所の判断
一 争点1について
1 まず、原告商品が床下換気口用器材が通常有する形態のものであるか否かについて検討するに、証拠(甲二一~甲三二の一五、甲三五、原告代表者本人)によれば、床下換気口用器材については、その形状、大きさ、通孔の形態、数、スライドの有無及び開閉の態様、材質等に種々の組み合わせがあることが認められる。したがつて、原告商品の特徴とされる点につき、その材質、通孔の形態及び数、大きさ、色等その構成要素とされる形状・形態を個々の要素に分解して検討することは相当ではない。けだし、個々の要素が一般的に使用されているものであつても、その組み合わせ如何によつてはその商品の形態等が不正競争防止法二条一項一号に言う商品表示に該当することが考えられるからである。
2 ところで前記各証拠によれば、材質・形態を総合的に検討して原告商品と酷似する材質・形態を有する商品は川島銅工所の製作に係るものであるが、これを原告商品と比較すると、通孔の数、裏面に張られた網の溶接方法、表面仕上げの方法等に差異があるほか、川島銅工所作成の商品には原告商品のようなブロンズ色のものは存在しないことが認められるから、原告商品が床下通気孔用器材において通常有する形態のものであると断ずることはできない。
3 そして、証拠(甲六、甲七、甲九の一~四、甲一九、甲二〇、甲三三の一~六六、甲三六の一~甲三七の八二、原告代表者本人)によれば、原告は、昭和六〇年六月から原告商品の販売を始めたが、当初は売上が伸びなかったこと、そのため原告の営業マンが問屋及び建築業者等を戸別に訪問して営業活動をする一方、同伴販売、景品付き販売などの販売活動を行うなどして原告商品の宣伝に努めたこと、その結果、昭和六〇年一〇月末までに五万七二一八個を販売したのを皮切りに、次年度以降平成六年一〇月末までの毎決算期ごとに八万八一一八個、一六万〇四六二個、二四万五四〇二個、二七万八七九三個、三三万一〇四八個、三人万〇九〇二個、五五万四一九二個、七一万九三九一個とその販売数を伸ばしてきたこと、平成五年度の販売個数は我が国の床下換気口用器材の需要の一割に達すると推認されること、原告商品の販売先も東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、宮城県、新潟県等の広範囲の八〇社を越える取引先に及んでいること等の事実が認められ、これらの事実に照らせば、原告商品は、その宣伝と販売個数により、遅くとも平成四年一〇月ころまでには問屋、建築業者、基礎屋の間において、原告のステンレス製の金網張設の「床下換気孔」として周知されたものと認めるととができる。したがって、この点に関する原告の主張は理由がある。
なおこの点につき、前記証拠(甲三二の六、甲三五)によれば、川島銅工所作成の床下換気口用器材が原告商品と酷似している事実が認められるが、証拠(甲三五、原告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば、その販売開始時期は昭和六一年一一月二〇日であり、販売数も原告商品の一割にも満たず、一般に流通している事実も認められないから、原告商品と酷似している右川島銅工所作成の床下換気口用器材が存在する一事をもって、原告商品の商品表示の周知性が否定されることはない。したがって、この点に関する被告の主張は理由がない。
4 ところで、前記前提事実及び争いのない事実並びに証拠(甲一〇の一~甲一三の三、甲三三の一~六六、原告代表者本人、被告代表者本人)によれば、被告商品は原告商品に極めて酷似しており、そのため原告商品の商品表示として誤認混同が生じていると認められるところ、被告商品は被告代表者が原告商品を参考に製造したものであること、その際、原告商品については実用新案権及び意匠権等の存否について調査したものの、右登録がないことから被告代表者において類似商品の製造が許されるものと即断して原告商品よりも安価で販売する目的で製造を開始したこと、当初被告は、被告商品の写真ではなく原告商品の写真を雑誌に掲載して販売を試みたこと、被告の右行為に対する原告の警告にもかかわらず、その後も被告商品の製造販売を続けたことの各事実が認められ、これらの事実に照らせば、被告商品の製造販売は不正競争防止法二条一項一号に該当することは明らかである。したがって、この点に関する原告の主張は理由がある。
二 差止め請求、廃棄請求、損害賠償請求の責任原因
前記のとおり、被告の行為は、不正競争防止法二条一項一号に規定された不正競争行為に該当するところ、これにより原告が営業上の利益を侵害されることは明らかであるから、原告が被告に対し、右行為の差止を求める請求には理由があり、また、右行為の停止または予防に必要な行為として、その製造の差止を求める請求には理由がある。
また、被告商品及び半製品並びにその製造に供した金型及び右各商品の宣伝、広告、説明用パンフレット類の廃棄は、侵害の停止または予防に必要な行為に該当することは明らかであるから右廃棄を求める請求もまた理由がある。
そして、前記認定事実によれば、被告は原告商品に酷似する被告商品を安価に販売する目的で製造することを企図し、販売当初からの原告の警告にもかかわらず前記不正競争行為である被告商品の製造販売を続けてきたものであって、この点につき被告には重大な過失があるといわざるを得ない。したがって、被告には被告の不正競争行為によって原告が被った損害を賠償すべき義務がある。
三 争点2について
1 証拠(甲九の一~四、甲一四の一~四、甲四〇、甲四一の一~六八、原告代表者本人)によれば、被告商品の価格が原告商品の価格を下回っていたこと、原告は、平成五年五月一日から原告商品の価格を甲第九号証の四記載の価額に改訂したことの各事実が認められるところ、原告は、右値下げ分は被告の不正競争により原告に生じた損害である旨主張する。しかしながら、証拠(乙八)によれば、原告商品と酷似している前記川島銅工所の商品の価格が原告商品の価格を下回っている事実が認められる他、一般に商品の価格はその時々の経済事情や当該商品の製造及び販売数量すなわち供給量並びに需要量さらには当該商品の陳腐化等の事情により影響を受けることは否定できないところ、右事実に照らせば、原告が原告商品の値下げを行った背景には被告の不正競争行為があった点は否めないが、右川島銅工所の商品の価格や原告商品の価格の改定時には原告商品が開発されてから既に八年以上経過していること及び値下げ後の原告商品の販売による利益はあることをも併せ考えると、原告商品の値下げが被告の不正競争行為に全面的に起因していると認めることはできない。したがってこの点に関する原告の主張は理由がない。
2 ところで、被告は、原告の申立てによる証拠保全の手続(平成六年(モ)第一一九号)において、被告商品の製造、販売に関する総勘定元帳等の帳簿類を提出せず(甲三四)、第一四回口頭弁論期日において商品別売上日報等(乙一一、乙一二)を提出したのみである。しかしながら、仕入れや販売管理費に関する信頼すべき資料がないことから、これらの資料のみによっては被告商品の販売による正確な利益を算出することは困難であるといわざるを得ない。
また、原告商品の販売減による損害について、床下換気口用器材の需要の一割の販売が見込めたはずであるとする原告の主張は、原告商品のシェア自体に変遷があること(甲四三)に照らし、不確実であって採用することができない。
3 そこで、原告が主張するように、不正競争防止法第五条の規定によって、被告の得た利益が原告の損害と推定すべきである。ところで、その場合の被告の得た利益について検討するに、これが損害の填補であることに鑑みれば、被告の得た利益については純利益をもつて論ずるのが相当である。しかしながら本件については、前述したように、被告提出の資料によってはその純利益を算定することは困難であることから、原告が原告商品の販売によって得る純利益を基礎として算定することの可否について検討するに、証拠(原告代表者本人、被告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告商品も被告商品も同一の材質を使用した商品であること、その加工の工程もほぼ同一であると認められること、販売先も建築資材等の問屋であって共通すること等の事情を斜酌すれば、結局本件における被告の得た純利益については、原告が原告商品の販売によって得る純利益を基礎として算定せざるを得ない。
そして、争いのない事実及び証拠(甲九の四、甲五四~甲五六、乙六、証人小林尊治)によれば、原告商品の販売により原告が得た純利益の額は、原告商品一個につきおよそ一〇五円と認められる(原告商品一個の価額については、被告以外の他社との競合等もあって適正な価格に改訂されたものと認めるのが相当であるから、改定後の価額を基準とすべきである)ところ、証拠(乙一一、乙一二)によれば、被告が平成五年から平成七年までに販売した被告商品の個数は少なくとも一二万三四七一個と認められるから、被告の得た利益は一二九六万四四五五円であると推定される。したがつて、不正競争防止法五条一項により、原告は右と同額の損害を受けたものと推認される(なお、原告の主張すを弁護士費用等の費用については、不正競争防止法が損害額の推定規定をおいた趣旨に鑑み、右推定を受ける損害の額に含まれると解するのが相当である。)。
4 よって、原告の損害賠償に関する請求は、被告の不正競争行為による損害賠償金として金一二九六万四四五五円及びこれに対する不正競争行為の後である平成六年一〇月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。
四 したがって、本件請求は、被告商品の製造、販売等の差止め並びに被告商品・半製品及びその製造に供した金型及び右各商品の宣伝、広告、説明用パンフレット類の廃棄並びに被告の不正競争行為による損害賠償金として金一二九六万四四五五円及びこれに対する不正競争行為の後である平成六年一〇月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 下山芳晴)
原告商品(1)の説明書
原告商品(1)にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を一五個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成し、前記全通孔には前記凹面部の背面部側に張設した金網板が臨設して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一二〇mm×W三〇〇mmである。
原告商品(1)
<省略>
原告商品(2)の説明書
原告商品(2)にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を一五個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成し、前記全通孔には前記凹面部の背面部側に張設した金網板が臨設して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一五〇mm×W三〇〇mmである。
原告商品(2)
<省略>
原告商品(3)の説明書
原告商品(3)にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を二〇個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成し、前記全通孔には前記凹面部の背面部側に張設した金網板が臨設して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H二〇〇mm×W四〇〇mmである。
原告商品(3)
<省略>
原告商品(4)の説明書
原告商品(4)にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を二四個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成し、正面中央部において縁取凸部三列が横に連結して成り、前記全通孔には前記凹面部の背面部側に張設した金網板が臨設して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一五〇mm×W四五〇mmである。
原告商品(4)
<省略>
原告商品(5)の説明書
原告商品(5)にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を一五個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一二〇mm×W三〇〇mmである。
原告商品(5)
<省略>
原告商品(6)の説明書
原告商品(6)にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部においで、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を一五個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一五〇mm×W三〇mmである。
原告商品(6)
<省略>
原告商品(7)の説明書
原告商品(7)にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を二〇個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H二〇〇mm×W四〇〇mmである。
原告商品(7)
<省略>
原告商品(8)の説明書
原告商品(8)にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を二四個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成し、正面中央部において縁取凸部三列が横に連結して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一五〇mm×W四五〇mmである。
原告商品(8)
<省略>
イ号物件の説明書
イ号物件にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を一四個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成し、前記全通孔には前記凹面部の背面部側に張設した金網板が臨設して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一二〇mm×W三〇〇mmである。
イ号物件
<省略>
ロ号物件の説明書
ロ号物件にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を一五個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成し、前記全通孔には前記凹面部の背面部側に張設した金網板が臨設して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一五〇mm×W三〇〇mmである。
ロ号物件
<省略>
ハ号物件の説明書
ハ号物件にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を二〇個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成し、前記全通孔には前記凹面部の背面部側に張設した金網板が臨設して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H二〇〇mm×W四〇〇mmである。
ハ号物件
<省略>
ニ号物件の説明書
ニ号物件にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を二四個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成し、前記全通孔には前記凹面部の背面部側に張設した金網板が臨設して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一五〇mm×W四五〇mmである。
ニ号物件
<省略>
ホ号物件の説明書
ホ号物件にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を一四個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一二〇mm×W三〇〇mmである。
ホ号物件
<省略>
ヘ号物件の説明書
ヘ号物件にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して四面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を一五個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一五〇mm×W三〇〇mmである。
ヘ号物件
<省略>
ト号物件の説明書
ト号物件にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を二〇個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H二〇〇mm×W四〇〇mmである。
ト号物件
<省略>
チ号物件の説明書
チ号物件にかかる床下換気口の形態は、全体形状が長方形に成るステンレス鋼(SUS三〇四)製の平板の正面部において、その四側周囲に縁取凸部面を残して凹面部を形成し、この凹面部に上下端部は円孤形に成る細巾縦長の通孔を二四個列設けるとともにその通孔の全周辺部に縁取凹部を形成して成るものである。
その大きさ及び寸法は、H一五〇mm×W四五〇mmである。
チ号物件
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旧価格/新価格格差(A)ランク
平成5年5月1日~平成6年7月30日まで
NO.1
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旧価格/新価格差(A)ランク
平成5年5月1日~平成6年7月30日まで
NO.2
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旧価格/新価格差(B)ランク
平成5年5月1日~平成6年7月30日まで
NO.3
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本件特許と公知技術の対比
公知技術の屋根接合構造
公開実用新案公報実開昭48-100310号
昭和48年11月27日公開(乙第2号証)
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(本件特許との対比をわかりやすくするために、図中の番号は上記実用新案公報の番号から本件特許の参照番号に変えてある。)
本件特許請求の範囲第1項
(A) 長手方向の中央部に面板部32、この面板部32の一側部に軒側成形部33、同他側部に棟側成形部34を形成した横葺き屋根板31を有し、前段側横葺き屋根板31の棟側成形部34に、次段側横葺き屋根板31の軒側成形部33を相互に係合接続させて構成する横葺き屋根の接合部構造であって、
(B) 前記軒側成形部33には、立下り部36を立下げて下部折り返し縁37を形成させ、この下部折返し縁37を内側に折り返して端部に縁曲げ部39をもつ折り返し部38とし、
(C) 前記棟側成形部34には、内側ヘオーバーハング状に突出する立上り部40を立上げて、その立上り基部に水捌き空間部50を抱え込んだ突出形状部を形成させた上で、前記下部折り返し縁37を突き合せる上部折り返し縁41を形成させ、
(D) この上部折り返し緑41を外側に折り曲げて、前記縁曲げ部39を含む折り返し部38を受け入れる受け入れ部42とし、
(E) この受け入れ部42から前記折り返し部38を覆うようにして、下向きの山形部43をもつ折り返し抱持部47を形成させたこと
を特徴とする横葺き屋根板を用いた屋根の接合部構造。
( 部は左記公知技術の屋根接合部構造との相違点)